福岡市天神の英語専門塾GCA・代表のグッチャンです。模試ではときどき変な問題が出ますが、あまり気にしないようにしましょう。
アラビアン・ナイトからの出題
ある模試で「アラビアン・ナイト」からの物語が長文問題として出題されました。
この長文は、英語力以前にシェヘラザード(アラビアン・ナイト)の話を知っていたかどうかで理解度が真っ二つに分かれたと思うのです。
もちろん、どのようなトピックの長文でも背景知識は重要です。しかしこれは…。
いくらお伽話とはいえ、普通の感覚で読んでしまうとまったく意味がわかりません。
逆にあらすじだけでもどこかで聞いていたら、あまり英文が読めなくても簡単に理解できたと思います。
どういう物語かというと:
① むかしむかし、ある王様が王妃を深く愛していた。
↓
② ところが王妃が浮気した。
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③ 王は深く悲しんだ。
(…ここまではまあ理解できると思います)
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④ 王は法にしたがって王妃を死刑にした。
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(このあたりから???ってなりませんか? さらに…)
↓
⑤ 王は女性不信に陥り、女性が少なければ少ないほど世の中は平和になると考えた。
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(??????)
↓
⑥ そして、宮殿に毎晩毎晩新しい女性を連行してひと晩限りの王妃とし、翌朝その女性を死刑にするという制度を作った。
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(現代の日本人の感覚ではまったく意味不明です…)
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⑦ 国中の独身女性、娘を持つ親は悲しみと恐怖に支配された。
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⑧ 王の不正を正すため、賢くて勇敢な娘・シェへラザードが立ち上がった…(以下略)
いかがでしょう。ある程度の英語力があっても、このような現代の常識に反する展開の物語は非常に読みにくいですよね。
「文法と単語」だけでは英文は理解できない
かつて、ある有名私立高の入試で以下のような正誤問題が出題されました。
① He is too strong to carry this heavy box.
(彼は / 強すぎます /…この重い箱を 運ぶには)
≒ 彼は強すぎてこの重い箱を運べない。
② He is strong enough to carry this heavy box.
(彼は 十分に強い /…この重い箱を 運ぶには)
≒ 彼は十分強いのでこの重い箱を運べる。
もちろん②が正解です。
ですが、実はこの判断の根拠は文法知識ではなくて、 論理(logic)なのです。
普通に考えると「力が強い → 重い物が運べる」というロジックが働くからです。
……
これを仮に「力が強い人は重い物を運んではいけない」という法律がある国の話だとしましょう。
すると…
今度は①が正解になってしまいますよね。
極端に言うと、今回の長文はこのような特殊な法律のある世界の話なわけです。
王妃が浮気したから死刑 → 女性が少ないほど世の中は平和になる → 王は国民の中から毎日違う女性と結婚し翌日その女性は翌日に処刑される…、特殊すぎるにもほどがあります。
だからといって、日頃から幅広い知識・情報に接して教養を深め、どんな文章にも対応できるようにしましょう…という結論に持っていこうとは思いません(もちろん、シェヘラザードの物語くらいは一般教養として知っておいてほしいのですが、それは決して「英語力」ではありません)。
当たり前の話になってしまいますが、たくさんの長文教材を学習する中で、文法・構文の知識と教養・背景知識を地道に向上させ、文法と意味の両方から小さな違和感に気づけるようになっていくしかありません。