福岡市天神の英語専門塾GCA・代表のグッチャンです。第1問の解説から脱線しますが,アカデミックな文章を読む上での大変重要なポイントなので,ここで詳しく説明します。
『直観に反する事実』
アカデミックな文章(研究論文)を読むときは,ズバリ
『直観に反する事実』
に注目するのが基本です。
そもそも研究論文とは,ひと言でいうと,
直観に反する事実を発見・検証し,発表するために書かれる
のです。
どういうことかー
たとえば,「高校生の勉強時間と成績」についての研究があったとします。
そこで多くのデータを集めて検証し…
[勉強時間が長い] → [成績が良い]
という結果が出て,論文として発表したとします。
ところが,この研究は決して良い研究とは言えません。
なぜなら,[勉強時間が長い] → [成績が良い] という事実が膨大なデータによって科学的に検証されても,
そんなこと誰だってわかっているから
です。意外性がない,「逆説的」じゃない,と言い換えてもよいでしょう。
この研究は人の『直観』(=パッと考えて思いつくこと)に何も反していない,要するに「新しい発見(知見)」がないわけです。
逆に,[勉強時間が長い] → [成績が悪い] という内容だったら,優れた研究論文になる可能性があります。
読む人が「え?!ホント??」と思うからです。つまり『直観に反する』のです。
そこから「なぜそんなことが起こるのだろう?」という探求が始まります。
あらゆる研究の目的というのは,まだわたしたちが知らないことを発見することです。
発見のない=『直観に反する事実がない』研究論文に価値はありません。
『研究者』としてのポテンシャルを問う設問
では,第1問 第1パラグラフ(段落)での『直観に反する事実』とは一体何でしょう?
……
……
……
そう,
問1. 下線部(1) の研究結果を日本語で述べなさい。
の解答になる部分,すなわち,
…brainstorming groups given quantity goals generated both more ideas and significantly higher-quality ideas than those given a quality goal alone.
ですね。
常識でパッと考えたら,つまり『直観』にしたがうと,
[アイデアの『質』を求めるという指示] → [質の高いアイデアの創出]
となりますよね。
ところがこの研究ではなんと,
[アイデアの『量』を求めるという指示] → [質の高いアイデアの創出]
という結果が出たわけです。
「え?なんで?!」と思いますよね? 『直観に反して』いますよね。
だから,このパラグラフのポイントになるわけです。つまり,設問になっているのです。
こうやって,出題者である九州大学は,実は単純な英語力だけでなく,
あなたたちが大学で優れた研究をするセンスがあるかどうかを問うているのです。
求められる『ツッコミ』力
だから,似ていてまぎらわしい quantity と quality をうっかり読み間違えてしまい,
「アイデアの質を求められたグループが質の高いアイデアを出した」と誤読してしまったとしても,
…って,そんなんエラい学者先生やなくてもわかるわ(笑),
当たり前(=直観に反していない)やないかい!
と思い切りツッコミを入れて,
自分の読み間違いに気づかないといけません。
これがアカデミックな文章(研究論文)を読むときのいちばん大切なポイントなのです。
(続きます)