文法ノート (grammar)

この・あの・その

「That=あの」? 「The=その」??

「この~」「あの~」「その~」を英語でどう言いますか? この表のように思っていませんか?

の~thisOpen this box.の箱を開けなさい。
の~that Open that box.の箱を開けなさい。
の~theOpen the box.の箱を開けなさい。

この表は,「この~」はthis~で,「あの~」はthat ~で,「その~」はthe ~だということを表しています。

残念ながら,この表は間違っています。でも,このように思っている学習者がたくさんいます。あなたはどうですか? 

日本の学校で英語を学ぶと,まず,thisとthatを「この」「あの」だとして覚えて学習が進み,定冠詞のtheが出てくると,「theは『その』という意味だ」として覚える人が多いのです。

でも,悪いのは学習者ではなくて,そのように教える側です。参考書などにも上の表のようなことが書いてあったり,theが出てくるたびに英語の先生が「その~」と言うので,学習者が間違ったことを覚えてしまうのです。

this/that/the の正しい使い分け

では,this ~, that ~, the ~の正しい使い方を説明しましょう。次の表を見てください。

の~thisOpen this door.のドアを開けなさい。
の~ の~thatOpen that door.のドアを開けなさい。 のドアを開けなさい。
どれだかわかっている~theOpen the door.ドアを開けなさい。

まず,「この~」はthis ~です。自分の近くのものを指して「この~」というときにはthis ~と言います。これは簡単ですね。

の本 this book  

のお金 this money  

の鉛筆 this pencil

次に,「あの~」と「その~」ですが,両方ともthat ~となります。自分の近くではなくて,相手の近くにあるものを指して「その~」と言うときもthat ~ですし,自分の近くでもなく,相手の近くでもないものを指して「あの~」と言うときもthat ~となります。日本語の「あの~」と「その~」の区別は英語にはありません。

の本 that book 

のお金 that money 

の鉛筆 that pencil

の本 that book 

のお金 that money 

の鉛筆 that pencil

(相手が持っている鉛筆を指さして)

の鉛筆は使うな。

Don’t use that pencil.

(向こうの方にある机の上の鉛筆を指して)

の鉛筆を使え。

Use that pencil.

指さしながら「あの鉛筆」と言うときも,指さしながら「その鉛筆」と言うときも,英語ではthat pencilになります。

最後にtheです。定冠詞のtheに相当する日本語の単語はありません。決まった訳語がないのですから,「その=the」と考えるのは間違いです。

This ~とthat ~は「どの~」かを指し示すために使いますが,the ~はすでに「どの~」かがわかっているものに付けて,「話し手にも聞き手にも,どの~なのかわかっている~」という意味を表すのです。話者から近いのか遠いのかは関係ありません。

Use this pencil. Don’t use that pen. 

の鉛筆を使え。の[の]ペンを使うな。

↑指さして指定している。

Use that pencil. Don’t use this pen. 

の[の]鉛筆を使え。のペンを使うな。

↑指さして指定している。

Use the pencil. Don’t use the pen. 

鉛筆を使え。ペンを使うな。

↑その場に鉛筆もペンも一本ずつしかないから,話し手にも聞き手にも,どの鉛筆のことなのか,どのペンのことなのかわかっている。指さして指定する必要はない。

Use a pencil. Don’t use a pen. 

鉛筆を使え。ペンを使うな。

↑どの鉛筆とも,どのペンとも言っていない。鉛筆ならどれでも使ってよい。どのペンであろうと使ってはいけない。

“the night” はいつのこと?

最後に次の表現を見てください。どんな意味だと思いますか。

stay here for the night

(言わなくてもどの夜のことだかわかる)夜の間ここに滞在する」ということですから,「今晩ここに泊まる」という意味です。次のように使います。

「もう遅い時間だよ。今晩うちに泊まったらどう?」

It’s getting late. Why don’t you stay here for the night?

でも,stayedと過去形で使うと,「((言わなくてもどの夜のことだかわかる)夜の間ここに滞在した」ということになりますから,「昨晩/あの晩/その晩はここに泊まった」という意味です。昨晩,あの夜,その夜のうちのどの意味なのかは文脈で判断できます。

「私は酔っていたので,昨晩/あの晩/その晩はここに泊まった」

I was drunk, so I stayed here for the night.

ABOUT ME
柴田武史
GCA特別顧問。元中学校・高校英語教員。福岡県立福岡高等学校,西南学院大学文学部外国語学部英語専攻卒。福岡県立高校2校および私立弘学館中学校・高等学校で40年以上にわたり教鞭をとり,徹底した発音指導と基礎基本の定着を重視する独自の指導で大きな成果を上げる。高円宮杯第70回全日本中学校英語弁論大会中央大会では指導した生徒が決勝進出を果たす。1994年,The Japan Times社の英字新聞「週間ST」主催の英語暗唱大会で優勝。以後,英語指導者を対象とした発音指導を始め,小学校教員・中高英語教員・塾講師などを多数指導。アメリカ発音,イギリス発音に加え,事実上の世界標準である間大西洋アクセント(transatlantic accent)を自在に操り,フランス語・中国語・韓国語等の発音についても造詣が深い。2019年,第3回OPETS杯争奪全国英語スピーチ暗唱コンテスト優勝。国際英語発音協会認定英語発音指導士®。EPT®英語発音テスト 100点。英語検定1級。TOEIC 975点。TOEIC Speaking & Writing Tests 200点+200点。