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単数の they を知っていますか?

They = それら??

単数の they を知っていますか?

英単語の意味を日本語の訳語と結び付けて、英語単語=日本語単語のように覚えることは必ずしも悪いことではありません。例えば、日本語を母語とする私たちは、「hand=手」とか「walk=歩く」のように覚えます。しかし、ittheyを日本語の単語と結び付けて「it=それ」「they=彼ら、それら」と覚えるのはよくありませんから、認識を改めてください。「it=それ」が正しくないということについてはGCAの別のコラムがすでにありますのでそれを読んでください。

さて、they が「彼ら、それら」でないのなら、they の意味は何?と聞きたくなりますよね。実は、この語は意味とか訳語とか言うよりも、その「使い方」を理解することが大切な語なのです。では早速、they の使い方を説明しましょう。次の表を見てください。

複数を表す they

単数のhe / she / it の用法についてはたいていの人がおおむね理解していると思いますので、今回は they/their/them の用法を①②③という三つに分けて説明します。②③は単数の they です。

①は学校の授業でも学んでいるはずなのですが、「they = 彼ら、それら」という形でしか覚えていないと、「『彼たち』は英語で?」「Theyです!」「では、『彼女たち』は?」「わかりません…」というようなことも起こります。上の表でわかるように、he/she/it のいずれも複数形は they です。英語では、私たち=weと、あなたたち=you以外のものはすべてtheyなのです。例文を見てみましょう。

  1. These men are scientists. They came from Germany.
    この男性たちは科学者です。ドイツから来ました。
  2. These girls are high school students. They are from France.
    この少女たちは高校生です。フランスから来ました。
  3. These boys and girls are tennis players. They are Chinese.
    この少年たちと少女たちはテニス選手です。中国人です。
  4. These animals are brown bears. They live in Hokkaido.
    この動物たちはヒグマです。北海道に生息しています。
  5. These chairs are relatively expensive. They are made in Italy.
    これらのいすは比較的高価なものです。イタリア製です。

1~5の中の they をいちいち日本語の単語に置き換えようとするのは無駄なことです。人も動物も物も複数のときはthey になるということをしっかりと理解しましょう。そうすれば、theythey のままでわかるようになるはずです。

単数の they・その1

例文6と7にも they が使われています。Every~は文法的には単数なのですが、「すべての~」という複数の意味を持つので、he/she/it ではなくて they になります。

  1. Everybody said they were too tired to walk anymore.
    みんな疲れすぎてもう歩けないと言いました。
  2. I need everything. Could you bring them all tomorrow?
    全部必要なんです。明日すべて持ってきてくれますか。

集合名詞(複数の人をまとめて一つの名詞で表す名詞)の familypolice も複数の人たちを意味するので they になります。

  1. “Is your family still in Tokyo?”
    “Yes, they are, but they’re moving to Fukuoka next month.”
    「ご家族はまだ東京にいらっしゃるのですか」
    「はい、そうです。でも、来月福岡に引っ越します」
  2. The police won’t give up until they arrest the terrorists.
    警察はテロリストたちを逮捕するまであきらめません。

単数の they・その2

では②に行きましょう。②の they は単数の人、すなわち一人の人について使われます。一人の人のことを言っていても「その人の性別が不明のとき」と、「その人の性別を話し手が特定しないとき」には they で表すのです。

②のaは「性別不明の人」です。例文10の someone[somebody]「誰か」、11の a staff member「スタッフの人」、12の a lawyer「弁護士」のいずれも単数の人ですが、性別がわかりません。というか、そもそも性別を問題にしてはいません。このような場合には単数の人であってもtheyになります。

  1. Someone[Somebody] left their bag on the bench.
    誰かがベンチにカバンを置き忘れていきました。
  2. If you have a question, ask a staff member. They’ll be happy to answer you.
    ご質問があれば、スタッフにお尋ねください。喜んでお答えします。
  3. When you ask a lawyer, you’ve got to pay them a lot.
    弁護士に依頼すると、大金を払わなければいけません。

②のbの「その人の性別を話し手が特定しない人」というのはわかりにくいですね。例文13で、話し手は見知らぬ人 (a stranger) のことを話しています。この話し手は、その見知らぬ人に直接会ったわけですから、その人が男か女かはわかっているでしょう。なので、take himHe looked あるいは take herShe looked と言うことができるのですが、take them They looked と言うことによって、その stranger の性別を明らかにせずに、「その人」という感じで言うことができるのです。14の中の a tall person についても同様で、his headher head と言うことも可能ですが、their head と言えば「その人の頭」という感じになります。このような they/their/them の用法は正しい語法であり、まったく普通の英語です。

  1. A stranger asked me to take them to a police box. They looked like a foreign tourist.
    見知らぬ人から交番に連れて行ってと頼まれました。外国人旅行者のようでした。
  2. A tall person stood before me, and I couldn’t see anything but their head.
    背の高い人が私の前に立っていたので、その人の頭以外には何も見えなかった。

単数の they・その3

③に行きましょう。これもまたわかりにくいかもしれません。世の中には、自分は男でも女でもないとか、男でもあり、女でもあるとか、従来の男と女という分類には入らないと考える、あるいは感じている人たちがいて、そういう人たちは、自分は he/his/him と she/her/her のどれでもないので、「自分のことを指して話す際には they/their/them を使ってほしい」と求めることがあります。そのような場合には、例えば、自分の英語の先生は外見的には女性だけど、本人の性自認は男でも女でもないので、heshe ではなくて they を使ってほしいと言っている、というようなときには15のように言うのです。16の Mary と17の Peter も、MaryPeter の希望に沿って話し手は they/their/them を使っているわけです。

  1. My English teacher’s name is Elizabeth, but I call them Beth.
    私の英語の先生の名前はエリザベスですが、私はベスと呼んでいます。
  2. Mary is in Paris now. They’re coming home next month.
    メリーは今パリにいます。来月帰国します。
  3. Peter took off their coat before they sat down.
    ピーターは座る前にコートを脱いだ。

15、16、17のような they/their/them の使い方はまだ一般的ではありませんが、今後増えていく可能性があります。They/their/them の使用領域が広がり過ぎて、18のようなわかりにくい英文も出現し始めています。

  1. Elizabeth Baker is a politician. They say they may become a prime minister in the future.

18の theyElizabeth Baker を指し、They は世間一般の人たちを指すという解釈では、18は19と同じ意味の文になりますが、20のように解釈することも可能です。つまり、They sayTheythey maythey の両方とも Elizabeth Baker を指しているという解釈です。

  1. Elizabeth Baker is a politician. People say they may become a prime minister in the future.
    エリザベス・ベイカ―は政治家です。将来、総理大臣になるかもしれないと言われています。
  2. Elizabeth Baker is a politician. They say they may become a prime minister in the future.
    エリザベス・ベイカ―は政治家です。将来、総理大臣になるかもしれないと(自分で)言っています。

Elizabeth Baker さん自身が「私は女性です」と言っている場合は21か22になります。

  1. Elizabeth Baker is a politician. They say she may become a prime minister someday.
    エリザベス・ベイカ―は政治家です。将来、総理大臣になるかもしれないと言われています。
  2. Elizabeth Baker is a politician. She says she may become a prime minister someday.
    エリザベス・ベイカ―は政治家です。将来自分は総理大臣になるかもしれないと彼女は言っています。

「ゼロ人」を表す they

最後にもう一点…


They には①②③のどれにも該当しない使い方もあります。Nobodyno onethey になるというものです。「誰もいない」のに they とは変なのですが、選択肢が he/she/it/they の四つしかありませんから、they を選ばざるをえません。

  1. Nobody[No one] said they would help me.
    誰も私を手伝うと言ってくれなかった。
  2. Nobody[No one] wants their kid to be unhappy.
    我が子が不幸になるのを望む人はいない。

実は、they は複数であり、単数であり、そしてゼロでもあるのです。びっくりですね。

  1. Many people said they were interested in your project.
    多くの人が君の企画に興味があると言っていましたよ。…複数
  2. A company president said they were interested in your project.
    ある会社の社長が君の企画に興味があると言っていましたよ。…単数
  3. Nobody[No one] said they were interested in your project.
    だれも君の企画に興味があるとは言っていませんでしたよ。…ゼロ
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この記事を書いた人

GCA特別顧問。元中学校・高校英語教員。福岡県立福岡高等学校,西南学院大学文学部外国語学部英語専攻卒。福岡県立高校2校および私立弘学館中学校・高等学校で40年以上にわたり教鞭をとり,徹底した発音指導と基礎基本の定着を重視する独自の指導で大きな成果を上げる。高円宮杯第70回全日本中学校英語弁論大会中央大会では指導した生徒が決勝進出を果たす。1994年,The Japan Times社の英字新聞「週間ST」主催の英語暗唱大会で優勝。以後,英語指導者を対象とした発音指導を始め,小学校教員・中高英語教員・塾講師などを多数指導。アメリカ発音,イギリス発音に加え,事実上の世界標準である間大西洋アクセント(transatlantic accent)を自在に操り,フランス語・中国語・韓国語等の発音についても造詣が深い。2019年,第3回OPETS杯争奪全国英語スピーチ暗唱コンテスト優勝。国際英語発音協会認定英語発音指導士®。EPT®英語発音テスト 100点。英語検定1級。TOEIC 975点。TOEIC Speaking & Writing Tests 200点+200点。