ある模試で「アラビアン・ナイト」からの物語が長文問題として出題されました。
この長文は,英語力以前に,シェヘラザードの話をもともと知ってるかどうかで理解度が真っ二つに分かれたと思うのです。
もちろん,どのようなトピックの長文でも背景知識は重要です。しかしこれは…。
いくらお伽話とはいえ,ふつうの感覚で読んでしまうとまったく意味がわかりません。
逆にあらすじだけでもどこかで聞いていたら,あまり英文が読めなくても簡単に理解できたと思います。
どういう物語かというと:
むかしむかし,ある王様が王妃を深く愛していた。
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ところが王妃が浮気した。
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王は深く悲しんだ。
(…ここまではまあ理解できると思います)
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王は法にしたがって王妃を死刑にした。
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(このあたりからすでに!?ってなりませんか? さらに…)
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王は女性不信に陥り,女性が少なければ少ないほど世の中は平和になると考えた。
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(んんん???)
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そして,宮殿に毎晩毎晩新しい女性を連れてこさせてひと晩限りの王妃とし,翌朝なんと死刑にするという制度を作った。
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(ハァぁぁぁぁぁッ?????!!!!,ってなりますよね)
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国中の独身女性,娘を持つ親は悲しみと恐怖に支配された。
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王の不正を正すため,賢くて勇敢な娘・シェラザードが立ち上がった…(以下略)
…いかがでしょう。ある程度の英語力があっても,このような直観に反する展開の物語は非常に読みにくいですよね。
かつて,ある有名私立高の入試で以下のような正誤問題が出題されました:
① He is too strong to carry this heavy box.
(彼は 強すぎる/…この重い箱を 運ぶにはね)
≒彼は強すぎてこの重い箱を運べない。
② He is strong enough to carry this heavy box.
(彼は 十分に強い /…この重い箱を 運ぶのにね)
≒彼は十分強いのでこの重い箱を運べる。
もちろん,①が間違いで②が正解です。
ですが,実はこの判断の根拠は文法知識ではなくて, 論理(logic)なのです。
ふつうの感覚だと「力が強い→重い物が運べる」というロジックが働くからです。
これを仮に「力が強い人は重い物を運んではいけない」という法律がある国の話だとしましょう。
すると…
今度は①が正解になってしまいますよね。
極端に言うと,今回の長文はこのような特殊な法律のある世界の話なわけです。
王妃が浮気したから死刑 → 女性が少ないほど世の中は平和になる → 王は国民の中から毎日違う女性と結婚し翌日その女性は死刑…,特殊すぎるにもほどがあります。
ですので,日頃から幅広い知識・情報に接して教養を深め,どんな文章にも対応できるようにしましょう…,という結論に持っていこうとは個人的には考えません(もちろん,シェヘラザードの物語くらいは高校生には知っておいてほしいのですが,それは決して「英語力」ではありません)。
やはり地道に語彙を増やし正確に構文を把握するチカラをつけていく方が,英語学習としては優先度が高いでしょう。