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英検「合格」はゴールではなくスタート(1) 大問1・語彙問題

英検大問1対策で単語帳ばかり回していませんか? 日本語訳との一対一暗記では、4技能で使える語彙力は身につきません。GCAが考える、英検全体につながる効率的な語彙学習法を解説します。

「音読×直読直解」の英語専門塾GCA・代表のグッチャンです。

英検対策というと、まず「単語」を思い浮かべると思います。2級なら2級対策の単語集、準1級なら準1級対策の単語集を買って、赤いチェックシートで日本語訳を隠しながら何周も回す―。誰もが当然のこととして取り組んでいるその「英検対策」に潜む罠とは。

「大問1」の正解率=「語彙力」なのか

もちろん、語彙力は重要です。単語を知らなければ長文も読めませんし、リスニングもできません。

しかし、その語彙学習が「大問1の4択の穴埋め問題で正解すること」に偏りすぎてはいないでしょうか。

確かに、大問1対策は必要です。

問題数が多く、一問にかかる時間は短い。さらに英検協会の説明によれば、同じリーディング問題の中で、長文だから一問のスコアへの影響が大きく、大問1だから小さい、という扱いではありません。

合格だけを考えれば、大問1は重要な得点源です。

だからこそ、

「まず単語を覚えて、大問1で点を稼ぐ」

という戦略が広く定着しているのでしょう。

ただし、ここで「大問1で正解できること」と「語彙力があること」を混同してはいけません。

大問1では、短い英文の空所に入る語を4つの選択肢から選びます。

正解の単語を知っていれば一瞬で正解が選べます。たとえ知らなくても、他の3語を知っていれば消去法で正解できることもあります。

つまり、大問1で求められるのは、かなり限定された条件の中で単語を見分ける力にすぎないのです。

長文・リスニング・ライティング⋯で必要とされる「語彙力」

しかし、同じリーディング問題でも、大問2以降では様子が変わってきます。

4つの選択肢はただの単語ではなく、フレーズ(複数の単語の組み合わせ)やセンテンス(文)になります。文章の流れの中で、ひとつひとつの単語の意味を素早く正確に理解しなければなりません。

リスニング問題に進むと、そもそも文字がありません。

ライティングやスピーキングでは、選択肢すらありません。伝えたい内容に合う単語や表現を、自分の頭の中から取り出さなければなりません。

同じ「単語を知っている」でも、実際に要求される「語彙力」は大きく異なります。

つまり、

大問1で点が取れる=4技能で使える語彙力がある

ではないのです。

この違いを意識しないまま単語集を回し続けると、語彙学習そのものが大問1向けに偏っていきます。

charge = 料金?

赤いチェックシートを使った単語学習を考えてみましょう。

たとえば、

charge = 料金

と暗記できているとします。

では、

charge a battery

はどうでしょう。

ここでの charge は「充電する」という意味です。

charge him with theft

なら「彼を窃盗で起訴する」。

charge at the enemy

なら「敵に突進する」。

charge $10 for delivery

なら「配送料として10ドル請求する」。

全部、同じ charge です。

日本語訳だけを見れば、まるでまったく別の単語のようです。

これは charge が特殊な単語だからではありません。

英単語の意味は、重要な単語であるほど、日本語ときれいに一対一で対応するものではありません。

文脈によって意味が広がり、品詞すら変わり、組み合わせる語によって使い方も変わります。

語彙には「意味」以外の情報もあります。

どう発音されるのか。

どんな語と一緒に使われるのか。

会話の流れの中でパッと理解できるのか。

必要なときに自分で使えるのか。

ところが、

英単語を見る ⇔ 日本語訳を答える

という練習ばかり繰り返していると、

「知っている」単語なのに、リスニングでは聞き取れない。長文では意味が取れない。ライティングやスピーキングでは使えない。

⋯という笑えないことが少なからず起こります。

Make Haste Slowly. (急がば回れ)

英検対策の単語集には、数十年分の過去問を分析することによって出題頻度順に効率よく学べるという大きなメリットがあります。

それでも、

「大問1で正解できること」を語彙学習のゴールにしてしまうのは大変危険です。

文字と日本語訳だけ暗記した単語は、リスニングでは音を、長文では文脈の中での意味を、ライティングやスピーキングでは自分の頭から取り出す練習を、後からやり直さなければなりません。

そうであれば、最初から実際の文章で繰り返し出会い、辞書で例文を確認し、発音を耳で覚え、音読を通して具体的な使い方まで身につけた方が、実は効率が良いはずです。

大問1のための語彙を増やすのではなく、あらゆる問題で使える語彙を増やす。その結果として、大問1の正解率も自然と上がる。

4技能試験である英検では、この方法が合理的ではないでしょうか。

はるか古代ギリシャの人たちは、私たちに素晴らしい戒めの言葉を残してくれました。曰く、

Make Haste Slowly.

英検対策こそ、「急がば回れ」です。