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ライティング指導の実際~高円宮杯原稿から (2)

まず,初稿を段落ごとに分けて小見出しをつけます。
 
この小見出しをつける作業は大変重要です。
 
ひとつの段落(パラグラフ)に入れていい内容はひとつだけ,という鉄則があるからです。
 
実際にやってみましょう。
 
—————————
 
(1) Introduction: 主張(国際コミュニケーションには英語力が重要)
 
(前略)…「言葉が通じなくても心は通じる」と言う人もいる。もちろん心も大切だ。しかし言葉は…(中略)…コミュニケーションの道具として欠かせないものだ。
 
(2) Body1: 体験(英語力を試すためアメリカ旅行へ)
 
私は言語の重要性をこの夏のアメリカ旅行で痛感した。今回のアメリカ旅行の目的は中学校に入り2年半勉強してきた英語を実際に使ってみることだった。フォニックスで発音の基本を押さえ,中学校の教科書をすべて暗唱し,ALTには積極的に話しかけ,日本国内の米国人宅にホームステイさせていただき,オンライン英会話も毎日やった。…(後略)
 
(3) Body2: 体験(国際色あふれる参加者の描写)
 
NYについて3日目の早朝,私はNY発ナイアガラ,フィラデルフィア,ワシントンDCを巡る3泊4日の英語ツアーに参加した。ドイツやフィリピン,香港,イスラエル,オーストラリアなどの方々との旅行。…(後略)
 
(4) Body3: 体験(日常会話レベルでは英語が通じた) 
 
美しい景色をみて美しいね,美味しいものを食べて美味しいねと表現したいときは,目を見て感情を表情に出せば通じ合うことができる。…(中略)…自分や家族のこと,お互いの国のことについて話しているとあっという間に時間が過ぎた。…(中略)…英語が母国語でない人も英語がとても上手で,私も全力で英語を使った。…(後略)
 
(5) Body4: 体験(高度な内容を英語で表現できなかった)
 
…(中略)…そして私が一番アメリカに来たことを実感したのは,メトロポリタン美術館でのことだった。…(中略)…前半の小旅行で少しばかり英語に自信をつけていた私は英語の解説が聞けることにわくわくしていた。ツアー参加者は30名くらい。ぞろぞろと館内を一斉に移動するなか,早歩きで学芸員の方のそばを片時も離れないのは8歳から15,16歳位の子供たちだった。学芸員さんは一つ一つの作品について解説しながら,ツアー参加者にいろんな質問を投げかけた。子供たちはみんな手を上げ,自分の感じたことや疑問に思ったことを学芸員さんと同等の態度で堂々と発言していった。次の作品へ移動するときも学芸員さんと自由に話しながら。一対一の会話ではなく,集団の中での同年代の子たちの発言のスピードに圧倒された私は,手を挙げることさえできなかった。
 
(6) Conclusion: 主張(国際コミュニケーションには高度な英語力が必要)
 
この美術館での出来事は,日常会話程度の英語ではなくもっと学術的な話ができるレベルまで英語力をつけておかないと公の場で発言することはむずかしいということを私に教えてくれた。
 
(7) Conclusion: 主張(国際コミュニケーションに必要な英語力の習得に向けて)
 
…(中略)…これから世界中のよりたくさんの人といろんな分野の話をし,考えや気持ちを共有したいからだ。だから将来,もっともっと世界を広げることができるように語学を磨いていきたい。…(後略)
—————————
 
各段落のキーセンテンス候補に下線を引き,本筋とあまり関係のない部分は省略しました。なんとなくこの生徒が伝えたいこと(主張)が見えてきましたね。
 
小見出しだけまとめます。
 
(1) Introduction: 主張(国際コミュニケーションには英語力が重要)
 
(2) Body1: 体験(英語力を試すためアメリカ旅行へ)
 
(3) Body2: 体験(国際色あふれる参加者の描写)
 
(4) Body3: 体験(日常会話レベルでは英語が通じた) 
 
(5) Body4: 体験(高度な内容を英語で表現できなかった)
 
(6) Conclusion: 主張(国際コミュニケーションには高度な英語力が必要)
 
(7) Conclusion: 主張(国際コミュニケーションに必要な英語力の習得に向けて)
 
 
見出しを並べることで骨組みがはっきりしました。このスピーチが扱う問題・主張・その根拠は,
 
問題: 国際コミュニケーションに必要なものは何か。
 
主張: 高度な英語力が必要だ( ⇔「ハート」が重要だ)
 
理由: ハートだけでは日常会話から先に進めない
 
根拠: メトロポリタン美術館での経験
 
であることがわかります。
 
次のステップでは,この骨組みにふさわしい肉付けをしていきます。実際の指導では,この流れに沿ったエピソードや表現を,生徒本人にもう一度出してもらいました。
 
(続きます)
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この記事を書いた人

Good Chace Academy 代表/講師。英検1級。TOEICスコア960。1976年生まれ。弘学館中学校・高等学校,国際基督教大学(ICU)教養学部卒。高2で英検準1級合格,高3でTOEICスコア825,TOEFL(旧PBT)スコア590。ICU卒業後,一橋大学大学院商学研究科に進学し経営戦略論・経営組織論を学ぶ。2011年,Good Chance Academy設立。4技能化やアクティブ・ラーニングといった新しい言葉ばかりが先行する風潮の中でも,正確な音読・リスニングの徹底による読解力の養成を基本に置いた指導方針を貫き続ける。