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ライティング指導の実際~高円宮杯原稿から

第68回高円宮杯全日本中学英語弁論大会が開催されました。
 
 
今年はGCAから2名が出場しました。残念ながら地方大会の決勝戦で惜しくも敗退してしまいましたが,英語で「書く」あるいは「話す」とはどういうことか,この経験を通して理解が深まったことでしょう。
 
出場した生徒の原稿を参考に,具体的にどのようなプロセスを経て英文スピーチ(あるいはエッセイ)を構成していくのか紹介します(本人の了承済みです)。
 
まず「自由に書いてください」とだけ指示して日本語で提出してもらった初稿です。生徒のプライバシーに関わる部分は編集しています。
 
(以下引用)
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言語は私たちの生活をより潤すものだと思う。「言葉が通じなくても心は通じる」と言う人もいる。もちろん心も大切だ。しかし言葉は私たち人間の思考を深める道具として,コミュニケーションの道具として欠かせないものだ。
 
私は言語の重要性をこの夏のアメリカ旅行で痛感した。今回のアメリカ旅行の目的は中学校に入り2年半勉強してきた英語を実際に使ってみることだった。フォニックスで発音の基本を押さえ,中学校の教科書をすべて暗唱し,ALTには積極的に話しかけ,日本国内の米国人宅にホームステイさせていただき,オンライン英会話も毎日やった。さぁ私の英語はどのくらい使えるかな?JFK空港に着いたとき,英語を使えることの喜びで胸がいっぱいだった。
 
NYについて3日目の早朝,私はNY発ナイアガラ,フィラデルフィア,ワシントンDCを巡る3泊4日の英語ツアーに参加した。ドイツやフィリピン,香港,イスラエル,オーストラリアなどの方々との旅行。NYからナイアガラのあるカナダまでバスで片道10時間。途中,公園で休憩したり昼食を取りながらの移動はとにかく楽しかった。ナイアガラの滝ではイスラエルの同年代の子たちと思いっきりはしゃいだ。
 
美しい景色をみて美しいね,美味しいものを食べて美味しいねと表現したいときは,目を見て感情を表情に出せば通じ合うことができる。でもそれ以上のことは言葉が添えられて始めて理解できることもある。自分や家族のこと,お互いの国のことについて話しているとあっという間に時間が過ぎた。村上春樹の本について,ドイツ人の休暇の取り方について,フィリピンのプールについて,香港の英語教育についてなどなど,どれも興味深い話だった。英語が母国語でない人も英語がとても上手で,私も全力で英語を使った。自分の英語力がもどかしかった一方で,2年間英語を勉強してきてよかったと心から思った。
 
その小旅行のあと,私はニューヨークの町を今度は自分の足でまわった。食事を注文したり道を尋ねたりもしたし,地下鉄やバス,タクシーにも乗った。フルに頭を回転させ,それはもうテスト以上に緊張した。そして私が一番アメリカに来たことを実感したのは,メトロポリタン美術館でのことだった。作品の解説を聞くため案内のところで「日本語ツアーは何時からですか?」と尋ねた。すると「今日は残念ながら日本語ツアーはおやすみです。」すかさず「英語のツアーでもいいんですけど?」と尋ねてみる。「英語のツアーの方は11時15分にあの柱の前に集まってください。」前半の小旅行で少しばかり英語に自信をつけていた私は英語の解説が聞けることにわくわくしていた。
 
ツアー参加者は30名くらい。ぞろぞろと館内を一斉に移動するなか,早歩きで学芸員の方のそばを片時も離れないのは8歳から15,16歳位の子供たちだった。学芸員さんは一つ一つの作品について解説しながら,ツアー参加者にいろんな質問を投げかけた。子供たちはみんな手を上げ,自分の感じたことや疑問に思ったことを学芸員さんと同等の態度で堂々と発言していった。次の作品へ移動するときも学芸員さんと自由に話しながら。一対一の会話ではなく,集団の中での同年代の子たちの発言のスピードに圧倒された私は,手を挙げることさえできなかった。
 
この美術館での出来事は,日常会話程度の英語ではなくもっと学術的な話ができるレベルまで英語力をつけておかないと公の場で発言することはむずかしいということを私に教えてくれた。公の場で発言できる環境に日頃から身を置いておくことの大切も感じた。
 
帰宅後。旅行中の写真を見た父は「表情がすごく生き生きしているね。本当に楽しかったんだね。」と言った。一緒に旅行した母は「幼児の頃,夢中で遊んでいたあの時の表情。久しぶりに見た気がした。」と言った。一般的に語学は勉強であるが,私にとって英語を学ぶことは大きな楽しみ以外の何物でもない。これから世界中のよりたくさんの人といろんな分野の話をし,考えや気持ちを共有したいからだ。だから将来,もっともっと世界を広げることができるように語学を磨いていきたい。バイリンガルにとどまらずトリリンガルもしくはそれ以上の。
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(引用終わり)
 
旅行の様子や英語への思いが生き生きと伝わってくる文章です。
 
しかし,このままではあくまで旅行日記であって,スピーチ(あるいはエッセイ)にはなりません。
 
 
では,英文のスピーチやエッセイに必要なものとは何でしょうか―。
 
 
 
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それは,
 
① 明確な主張(問題と解決策)
 
② その理由
 
③ 理由を支える根拠・具体例(体験)
 
の3つです。さて,この活きのいい良い旅行日記を上質な材料として,この生徒がどのようにスピーチ原稿という料理を作り上げていったのでしょうか。
 
(続きます)
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この記事を書いた人

Good Chace Academy 代表/講師。英検1級。TOEICスコア960。1976年生まれ。弘学館中学校・高等学校,国際基督教大学(ICU)教養学部卒。高2で英検準1級合格,高3でTOEICスコア825,TOEFL(旧PBT)スコア590。ICU卒業後,一橋大学大学院商学研究科に進学し経営戦略論・経営組織論を学ぶ。2011年,Good Chance Academy設立。4技能化やアクティブ・ラーニングといった新しい言葉ばかりが先行する風潮の中でも,正確な音読・リスニングの徹底による読解力の養成を基本に置いた指導方針を貫き続ける。