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発音のための発音ではない (1)

「世界ではさまざまな訛りの英語が話されている。アメリカ発音ばかり教えるのは時代遅れではー」

「発音・アクセント問題は新共通テストでも廃止されるし,発音はもうやらなくていいのではー」

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細かく発音指導をしたり,発音セミナーを頻繁に開いていたりすると,必ずこのようなご意見をいただきます。

確かに一見,正しい意見のように見えます。

実は私自身,一昨年には世界有数の移民都市であるトロント,今年は南インドのケララ州にそれぞれ数週間滞在し,強烈ななまりの移民英語やインド英語の洗礼を受けてきました。

確かに最初はまったく聞き取れません…

トロントでは中東出身のタクシードライバーがホンダ(Honda)を「アンダ」と,南インドの人たちが breathing を「ブレッスィング」と発音するのには驚きました。

 

ですが…

 

少なくともこちらの言うこと(北米アクセント)はほぼ完璧に伝わるのです。

相手の言っている単語がわからないときは

“How do you spell it?”(つづり教えて)

のひと言でだいたい解決しました。

 

彼らが実際に話しているのは,日本語の九州弁や大阪弁レベルのあくまで「方言」です。

強いなまりの英語を話す人でもふだんはテレビやYou Tubeなどでは標準的な英語を耳にしています。それで,アメリカ発音かイギリス発音であればほぼ通じることが多いのです。

 

ですから,まず「世界中にさまざまななまりの英語があるから英米式発音は不要」というのは間違いです。

 

また,”発音不要論”の根拠となっている研究でも,日本人が最も苦手とする子音連結(例: ストロングsu-to-ro-n-gu → strong)ができないと,非ネイティブスピーカー同士でも相当伝わりにくいことが明らかになっています。

 

あるいは,コミュニケーション能力が高い人ほど「出川イングリッシュ」で十分であり,本当に必要なのは話す内容だと主張します。

確かにその通りかもしれません。これについても,このサイトでこれまでも繰り返し書いている通り,

それはコミュニケーション能力であって,「英語力」ではありません。

社会で生きていく上で,コミュニケーション能力は非常に重要です。ただ,本当にそういう意味でのコミュニケーション能力を向上させたいなら,英語もカタカナ語も一切通じない環境でトレーニングすべきでしょう。学校の(英語以外の)授業で,一切言葉を使わずに相手に正確に意思を伝えるワークをするのも有効ですね(冗談抜きで,ぜひ中学高校で採り入れてほしいトレーニングです)。

「コミュニケーション能力」が高かったとしも,ジェスチャーや表情などが一切使えない電話やメールでのやり取りで同じことが言えるでしょうか。

近年は「話せる」かどうかだけが本物の英語力のように語られますが,ほぼ英米式の発音が使われるテレビのニュースや公共の場でのアナウンスが聞き取れなくても良いのでしょうか。

英米式の発音を含む標準的な英語のスキルというのは,コミュニケーションをサポートする強力なツールです。変にアレンジすることなく,素直に学びましょう。

 

実は,標準的な発音を習得すべき理由はもう一つあるのです。

(続きます)

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この記事を書いた人

Good Chace Academy 代表/講師。英検1級。TOEICスコア960。1976年生まれ。弘学館中学校・高等学校,国際基督教大学(ICU)教養学部卒。高2で英検準1級合格,高3でTOEICスコア825,TOEFL(旧PBT)スコア590。ICU卒業後,一橋大学大学院商学研究科に進学し経営戦略論・経営組織論を学ぶ。2011年,Good Chance Academy設立。4技能化やアクティブ・ラーニングといった新しい言葉ばかりが先行する風潮の中でも,正確な音読・リスニングの徹底による読解力の養成を基本に置いた指導方針を貫き続ける。