MENU
受講予約
【冬期講習2024受付開始】日程・回数・内容が自由に選べる個別指導です 詳しくはコチラ

なぜ発音発音とうるさく言うのか?

わずかな例外はありますが,学校の授業ではほとんど発音を教えていません。トップレベルの高校であっても同じです。

実際,GCAにこれまで入会された100名を超える生徒さんで英語の発音の基本ができていた人は…,実に2名(別記しますが,2人とも私の母校の生徒さんでした)。

なぜ学校では発音を教えないのか。おそらく理由は以下の2つ:

(1) 入試・定期テストなどで出題しにくいから

きちんと発音をチェックするには一人ひとりに音読させる必要があります。学校にはそんな時間の余裕はありません。

「下線部の発音と一致するものを選べ」といった苦しまぎれの“発音・アクセント問題”はあります。

しかしそれは,たとえばピアノで「課題曲を弾きなさい」という実技試験の代わりに,「この曲のこの小節を弾くには,右手の2の指を計何回使えばいいか」という筆記試験をするようなものです。

ナンセンスですよね。

ICレコーダーへの吹き込みとAIによる採点という方式が徐々に普及してきているようですので,これについては数年後には状況が一変しているかもしれません。

(2) 集団授業では教えることが難しいから

発音の指導は楽器やスポーツの指導に似ています。

勉強というよりもフィジカル・トレーニング。頭で覚えるのではなく,呼吸・口の形・舌や唇の動かし方を文字通り体で覚えないといけない。

これが,教科書・ノート・板書(パワポ)を使う教室での授業とはどうにもマッチしません。

それで,学校ではスピーチコンテスト出場者やESSの部員だけに,まるで英語の「秘伝」のようにして発音を個人指導するんですね。

前置きが長くなりました。

発音は「秘伝」などではなく,むしろアルファベットが書けるレベルの基本中の基本です。アルファベットを習う段階で一緒に習得する必要があるのです。

なぜか―。

(1) そもそもローマ字読みは通じにくい,というよりまったく別の音

文字の世界では,日本語は「ひらがな・カタカナ・漢字」を使い,英語ではもちろんアルファベットを使います。両者はまったく異なりますよね。

同じように,音声の世界でも,日本語が「五十音」を使うのに対し,英語には英語の発音の体系がある。「五十音」と英語の発音は,ひらがなとアルファベットほどに違うのです。

このことを私たち日本人は感覚的に理解できません。

原因は小学校の国語の授業。

小学校では英語を勉強する前に,日本語をアルファベットで表す方法を習うんですね。すなわち「ローマ字」です。それで,私たちは子ども心に,o = 「オ」,a = 「ア」, n = 「ン」…と刷り込まれてしまいます(もちろん,ヘボン式ローマ字は日本語の固有名詞を表記するのに必須ですので,それはそれできちんと習得する必要があります)。

結果,中学校で本格的に英語を習い始めると,同じアルファベット(ローマ字)で表される英語を当たり前のように「ローマ字読み」してしまう

ここで,こう主張する人もいます:

「国際社会では,フランス人はフランスなまりの,中国人は中国なまりの,シンガポール人はシンガポールなまりの英語を堂々と話している。日本人もきれいな発音にこだわらずに(*1),堂々とカタカナ英語を話せばいい」

はっきり言って,これはウソです。

確かにフランスなまり,中国なまりの英語はあります。しかしそれはあくまで日本語でいう「関西なまり」「東北なまり」といった「なまり」レベルの問題であって,まったく違う音を出している,とりわけ存在しない母音を子音の間に加えているわけではありません(たとえば,strong → su-to-ron-gu)。

学生時代,私は日本語学校の留学生寮で住み込みのチューターをしていました。文字通り世界中から留学生が集まっていましたが,なかでも韓国人の学生は日本語の上達がとても早い。日本語と韓国語は文法がほぼ同じなのです。

それで,韓国人は発音で油断します。たとえば韓国語には日本語の「ダ」という音がありません(正確にいうと語頭の破裂音が無声化する)。

ある日,寮から外出しようとしていると,仲がいい韓国人の学生から言われました:

「大串さん,退学?」

「ん??? いや,ちゃんと大学行ってるよ(笑)」

「たからー,退学?」

「いやいや退学してないよ,学校行ってるよ」

「…???」

もうわかりますよね。

いま笑った人。あなたにはおそらくこの韓国の学生を笑う資格はありません。私たち日本人の多くはもっとひどい間違いを英語でやっているのです。

有名な she と see,rice と lice の違いといった豆知識レベルで満足するのではなく,早い段階で英語の発音を体系的に学び直しましょう。

*注1:

むしろ,過剰にこだわらなくていいのはスペリングの方です。PCの普及で(私を含む)日本人の大人が漢字を書けなくなっているのと同じように,ネイティブスピーカーの大人も難しいつづりの英単語が書けなくなっています。ワープロソフトがすぐ修正してくれますから。

そういう時代に,学校のテストでは一文字間違っただけで減点される一方,授業中に当てられて完全にカタカナ語読みしても,それを注意する先生はまだかなりの少数派です。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Good Chace Academy 代表/講師。英検1級。TOEICスコア960。1976年生まれ。弘学館中学校・高等学校,国際基督教大学(ICU)教養学部卒。高2で英検準1級合格,高3でTOEICスコア825,TOEFL(旧PBT)スコア590。ICU卒業後,一橋大学大学院商学研究科に進学し経営戦略論・経営組織論を学ぶ。2011年,Good Chance Academy設立。4技能化やアクティブ・ラーニングといった新しい言葉ばかりが先行する風潮の中でも,正確な音読・リスニングの徹底による読解力の養成を基本に置いた指導方針を貫き続ける。