最後に「音読のような単調な練習ではなくて,もっと高度なことを教えてほしい」という意見についてです。
まず前々回で説明したように,音読練習はそれほど単純なものではありません。
例えば学校の運動部の練習では,ミニゲームや練習試合をする前にランニングや筋トレ,1人での基本練習,数名での基本練習と段階的に行なうと思います。様々な形式の基本練習がほとんどで,ミニゲーム・練習試合や高度な戦術についてのミーティングは,割合としては実はかなり少ないのではないでしょうか。
英語学習における問題演習や講義というのは,スポーツにおける練習試合や戦術の解説と同じです。それだけやっても絶対にうまくはなりません。様々な基礎練習が十分に行われていることが前提なのです。
また,音読というのは練習の「内容」ではなくあくまで「方法」です。文法の例文を音読で理解し,長文を音読で定着させ,単語を音読で暗記し,添削を受けたエッセイを音読して自分のものにするのです。
文法問題の”難問”などでも,講師の解説を受けて「なるほど」と納得するだけでは不十分なのです。理解は英語学習の準備段階にすぎません。こういう複雑な構文は基本文からの変形パターンをワンステップずつ音読することで初めて身につきます。
長文も同じです。映像講義などでキーセンテンスやディスコースマーカー,選択肢の見抜き方についての解説をじっくりと聞き,SVOCMなどと構文をとっただけで学習終わらせてはいけません。まるでそれは,ピアノ教室でひと通り運指を習っただけでもう次の課題曲に移るようなものです。
本当の学習はそこからなのです。いったん理解した文章を5回10回,リピーティング,サイトラ,バックトランスレーション,オーバーラッピング,シャドウイングと様々な音読練習を行ない,自分のものにするのです。
いかがでしょうか。音読のイメージが少しは変わりましたか。